2009 年 18 巻 6 号 p. 635-639
症例は80歳の女性.左総腸骨動脈閉塞による左下肢間欠性跛行に対し,6mmリング付ゼラチン被覆ダクロン人工血管を用いて右外腸骨-左総大腿動脈交差バイパス術を行った.術直後の血管造影検査では異常なく,上肢 / 下肢血圧比(ABI)は0.49から0.84に改善した.術後 2 年 8 カ月に間欠性跛行が再発しABIが左0.56と低下した.血管造影検査を行ったところ吻合部から離れた人工血管非吻合部に著明な狭窄がみられ再手術を施行した.狭窄部位には器質化した血栓様構造物がみられ,これを除去してABIは0.73と回復,術後 3 年 2 カ月現在再狭窄はない.狭窄の原因は,通常の吻合部での仮性内膜肥厚による狭窄とは異なり,同様の報告はなく原因不明であるが,人工血管の変形はないものの,一時的な圧迫によって内膜損傷を生じ,血栓形成が生じた可能性が推察された.