2010 年 19 巻 3 号 p. 495-503
【目的】医療の進歩により非破裂性腹部大動脈瘤(AAA)に対する手術成績は安定したものとなっているが,破裂症例の治療成績は依然不良であり,とくに超高齢者における治療戦略は確立されていない.当院における80歳以上の破裂性腹部大動脈瘤(RAAA)(腸骨動脈瘤を含む)に対する臨床経過と治療成績を検討した.【対象・方法】2001年6月から2008年11月までに当院に搬送されたRAAAは56症例で,手術前死亡14例を除く42手術例を対象とし,80歳以上をE群,79歳以下をY群とした.手術は人工血管置換術を行い,両群間で(術前因子)併存疾患,動脈瘤径,Hardman Factor(HF),発症から病院到着までの時間,到着から手術までの時間,(術中因子)手術時間,大動脈遮断までの時間,遮断時間,出血量,輸血量,Szilagyi分類,手術方法,(術後因子)入院期間,合併症,死亡率を比較検討した.【結果】E群20例/Y群22例の平均年齢84歳/64歳であった.術後成績は術中死0/0例,術直後死4/3例,手術症例の在院死亡5/5例であった.手術前死亡の9/5例を加えた着院後死亡は14/10例であった.E群/Y群の検討では死亡率,入院期間などに差を認めず,どの群においても,生存/死亡例との間で有意差を認めた因子は出血に関連するものであった.しかし輸液によってショック状態を回避できた症例は良好な成績を得ることができた.【考察】RAAAに対する当院での手術成績は概ね満足できる結果であり,高齢者においても若年層と同等の術成績が期待できると考えられた.