日本血管外科学会雑誌
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総説
米国での研修はメリットかデメリットか? ─心臓外科フェローシップの経験から
廣瀬 仁
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ジャーナル オープンアクセス

2011 年 20 巻 6 号 p. 829-834

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抄録
【目的】日本の臨床研修は充実してきているが,研修期間中にできる手術の数と質が問題である.米国へ臨床研修に出る医師も数多いが,米国研修に際しては心しておくべきことがある.【方法】米国での臨床研修経験に基づき,その利点と問題点を記した.【結果】米国の教育病院では,研修医は体系的な教育を受ける権利があり,卒業までの間に行う手術数にも条件が設けられている.指導医は教育を与える義務があり,教育病院施設長は,研修医が適切な教育を受け,専門医試験に必要な症例を確認する義務を負う.米国にて,心臓,血管,胸部外科を目指す医師の大半は,一般外科の研修医を終了した後に専門研修医として2~3年を費やす.海外からの医師の場合,外科5年を経ずとも臨床フェローとして参加できるが,米国での専門医受験資格は生じない.米国正規レジデントの目標は専門医試験合格であるが,臨床フェローの目標は技術の習得であろう.日本人が米国で研修するに当たり,問題が3つある.1つは英語.患者や同僚とのコミュニケーションを行ううえで最重要である.2つめはUSMLE等の資格免許の問題である.免許がなければビザが出ず,ビザがなければ病院で勤務できず,米国で定められた勤務歴がないと免許が出ない.免許,ビザ,勤務資格の一つでも欠格すると米国滞在資格自体がなくなる.3つめは研修後に米国で就職することの難しさである.したがって,最終学年の研修の後は日本に戻ることとなるが,日本での再就職が思うようにいかないかもしれない.【結論】米国での臨床研修をめざす医師は,研修前,中,後の問題点を踏まえたうえで行動すべきであろう.
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