抄録
【背景】急性大動脈解離に伴う腸管虚血は依然として予後不良である.今回われわれは急性大動脈解離に伴う腸管虚血に対して上腸間膜動脈(SMA)形成術を施行し救命し得た1例を経験したので報告する.【症例】54歳男性.胸背部痛を主訴に受診.急性大動脈解離(Stanford A型)の診断で上行弓部大動脈置換術を施行した.術後2日目に腹部膨満と下血あり,CTにてSMAの高度狭窄を認めたため,SMAの血流不全による腸管虚血と診断し,緊急開腹術を施行した.SMAは血栓化した偽腔に圧迫され閉塞していたが,血栓除去後intimal flap切除を行い,flapと外膜を固定しSMA切開部をPTFEパッチで閉鎖した.これにより腸管虚血は改善し救命し得た.【結論】急性大動脈解離に伴う臓器虚血,とくに腸管虚血に対しては早期診断と不可逆性変化を来す前の血行再建が重要である.