日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
胸部大動脈手術中のトラネキサム酸持続投与は輸血量を減少させうるか?
安 健太五十嵐 仁楠原 隆義中塚 大介廣瀬 圭一岩倉 篤山中 一朗
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2012 年 21 巻 1 号 p. 1-4

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抄録

【目的】心臓大血管手術におけるアプロチニンの使用禁止に伴い,それに替わるものとしてトラネキサム酸(TA)を使用してきた.われわれは胸部大動脈手術におけるTA術中持続投与の有用性について比較検討した.【方法】2008年8月~2009年10月にかけて施行した胸部大動脈手術54例を対象とした(弁・冠動脈との合併症例,左開胸症例,stentgraft症例は除く).年齢71.1±9.9歳で男性24名.TAを術中に持続投与した19症例をT群(年齢70.8±9.7歳,男性11名),投与しなかった35症例をN群(年齢71.3±10.1歳,男性13名)とし比較検討を行った.内訳は解離性動脈瘤がT群10例・N群25例で真性瘤がT群9例・N群10例であった.緊急症例はT群9例・N群22例で,術前の疾患や緊急手術の頻度に有意差はなかった.【結果】術前検査でのHtや血小板,手術時間,ポンプ時間には両群間で有意差を認めなかった.術中・術後の平均の輸血量の比較を行うとMAPはT群7.2±5.5単位・N群14.7±12.1単位,FFPはT群6.9±6.2単位・N群14.9±12.5単位,血小板輸血はT群13.2±9.5単位・N群26.9±16.3単位と,いずれもT群で有意に(P<0.05)輸血量の減少を認めた.死亡例はT群0例・N群2例で,主要合併症はT群4/19例(脳梗塞1例,脳出血1例,人工血管感染1例,縦隔炎1例)・N群16/35例(脳梗塞8例,縦隔炎2例,再開胸4例,低酸素脳症1例,吻合部破裂1例)であった.【結語】胸部大動脈手術において術中にTAの持続投与を行うことで有意に輸血量を軽減できた.

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