日本血管外科学会雑誌
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Print ISSN : 0918-6778
症例
人工血管バイパス術後の鼠径部難治性リンパ瘻に対する大網充填による治療経験
上田 翔谷村 信宏三里 卓也納庄 弘基戸部 智
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2012 年 21 巻 4 号 p. 611-614

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抄録

人工血管バイパス術後の鼠径部難治性リンパ瘻は治療に難渋することも多いが,今回われわれは有茎大網充填が有効であった症例を経験した.症例は69歳女性,両側のFontaine分類IV度,Rutherford分類V度の重症下肢虚血に対し,両側総大腿動脈内膜摘除,右腋窩動脈-両側総大腿動脈バイパス術,右総大腿動 脈-膝下膝窩動脈バイパス術を施行した.術後,鼠径部難治性リンパ瘻となり,再縫合閉鎖,癒着術,局所圧迫など施行したが再発した.鼠径部の充填でよく利用される薄筋ではそれまでの処置でさらに拡大した鼠径部創に対しては不十分と判断し,人工血管感染や一部のリンパ浮腫で用いられる有茎大網充填術を施行したところリンパ瘻が治癒し,その後再発も認めなかった.難治性リンパ瘻に対する有茎大網充填の報告はわれわれの検索する限り認めなかったため,若干の文献的考察を含めて報告する.

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