抄録
症例は42歳男性,Marfan症候群.大動脈基部拡大および大動脈弁逆流を伴う急性大動脈解離を発症したため緊急でBentall手術および上行置換術を施行し,術後経過は順調であった.術後CTで腹部大動脈瘤があり,術後3カ月に他院で腹部大動脈人工血管置換術施行した.周術期に中心静脈カテーテル感染からMSSAを起因菌とする大動脈基部吻合部感染性仮性動脈瘤を合併した.また感染性脳動脈瘤破裂を起こし,くも膜下出血を合併した.2週間の抗生剤治療後,仮性瘤に対して手術を行った.再胸骨正中切開で低体温循環停止を併用しながらrifampicin含浸人工血管を使用して再Bentall手術を行った.また術後2日目に大網充填術を施行した.術後6週間の抗生剤投与を行い感染再燃は認めず,術前からの神経症状はリハビリにて改善した.術前脳出血を合併した人工血管感染は治療戦略が重要となる.集学的治療を行い救命できたため報告する.