日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
腎動脈遮断を要する腹部大動脈瘤手術
地引 政利工藤 敏文豊福 崇浩猪狩 公宏内山 英俊小泉 伸也米倉 孝治西澤 真人井上 芳徳
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2012 年 21 巻 5 号 p. 659-662

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抄録

要  旨:【はじめに】腎動脈上・傍腎動脈腹部大動脈瘤(PAA・JAA)や腎動脈上腹部大動脈遮断を必要とする腎動脈下腹部大動脈瘤(AAA)症例について検討した.【対象と方法】1996年1月から2010年10月にPAA・JAAや腎動脈上腹部大動脈遮断を必要としたAAA 56例のうち維持透析6例,緊急4例を除く待機例46例(男40例,女6例)(70±8歳)を対象とした.左腎静脈は流入静脈を切離し授動するか左腎静脈を離断し術野を確保し,腎動脈遮断前にマンニトールを0.5 g/kg点滴静注し,30分以上遮断の場合に4°Cリンゲル液40 mlを遮断腎動脈に注入した.腎動脈再建が必要な場合にあらかじめY型人工血管に6 mm ePTFEを側端吻合して中枢側吻合後,腎動脈を端々吻合した.【結果】左腎静脈離断は21例,腎動脈再建14例(両側3例,片側11例)で,腎動脈遮断時間は腎動脈再建例;49±14分,再建なし例;29±16分であった.術前後の腎機能は,各々血清クレアチニン(Cr)値1.0±0.5,1.1±0.5 mg/dl,eGFR値59±22,59±23 ml/min/1.73 m2で,腎動脈再建例でも各々術前後eGFR値56±26,57±31 ml/min/1.73 m2でともに有意差を認めなかった.腎機能増悪(Cr値上昇が0.3 mg/dl以上または術前後Cr比;1.5倍以上)を5例(再建;3例,再建なし;2例)に認め,在院死2例(再建;心不全1例,再建なし;S状結腸癌穿孔1例)だった.【結語】腎動脈上大動脈遮断を必要とするAAAに対して,本術式の方法による腎保護で概ね満足すべき結果が得られた.

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