日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
部分体外循環を使用した傍腎動脈腹部大動脈瘤の治療成績
伊藤 寿朗川原田 修義小柳 哲也奈良岡 秀一萩原 敬之田淵 正樹仲澤 順二前田 俊之栗本 義彦樋上 哲哉
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2013 年 22 巻 3 号 p. 629-632

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抄録

要  旨:【目的】部分体外循環を使用して人工血管置換術を行った傍腎動脈腹部大動脈瘤(PRAAA)の手術成績を検討した.【方法】2009年6月から2012年4月までに,当院で部分体外循環を用いてPRAAAの人工血管置換術を施行した待機手術10例を対象とした.平均年齢74±7歳,男女比9:1.大動脈瘤の病態は真性瘤が7例,腹部大動脈人工血管術後中枢側吻合部仮性動脈瘤が3例であった.全例,左傍腹直筋切開を第7肋間へ延長し,横隔膜を弧状に切開して腹膜に覆われた腹腔内臓器を右側に脱転して術野を確保したのち,大腿動静脈から部分体外循環を装着し,選択的腹部分枝動脈灌流を併用して手術を行った.【結果】腎動脈の再建は左腎動脈が5例,右腎動脈が2例,両腎動脈の再建が1例で,再建を必要としなかった症例が2例であった.平均体外循環時間128±43分,腹部分枝動脈への灌流時間は60±33分であった.再建した腎動脈への灌流時間は116±22分であった.人工呼吸器離脱時間は術後14±1時間で,全例術翌日には抜管が可能であった.術後,脊髄虚血障害が原因と考えられる排尿障害を1例に認めたが,対麻痺などの神経学的合併症のほか,腎不全,呼吸不全,心不全などの合併症もみられず,病院死も認めなかった.【結論】部分体外循環を使用したPRAAA人工血管置換術は,腹部臓器の虚血時間に左右されることなく手術を施行することが可能で,術後腎機能の悪化,呼吸不全などの合併症もみられず良好な成績であった.

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