抄録
要 旨:下行大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術(TEVAR)後に発症したB型大動脈解離をきっかけとして,連鎖的に逆行性A型大動脈解離,食道大動脈瘻,ステントグラフト感染を併発して救命しえなかった1例を経験したので報告する.症例は80歳の男性で,下行大動脈真性瘤に対するTEVAR施行後約2週間目にB型大動脈解離を発症し,その後腹部虚血症状の出現と解離腔拡大および真腔の狭小化を認め再度TEVARを施行した.術後38°C以上の高熱が持続したがグラフト感染を疑う所見に乏しく保存的治療を継続し,2回目のTEVAR後25日目に血液培養でMSSAを認め,同時に逆行性血栓閉塞型A型大動脈解離を認めたために上行置換術を行った.以後も感染のコントロールができず食道大動脈瘻を併発し,初回手術から約4カ月で死亡した.常にグラフト感染は念頭に置いていたが手術の機会を逸した.