抄録
要 旨:症例は64歳男性.既往歴として冠動脈形成術,左肺癌手術等がある.肺癌術後のフォローアップの造影CT検査で,腎動脈下腹部大動脈に2カ月前の単純CTでは認めなかった大動脈周囲の血腫形成と,後壁に向かって造影剤漏出を認め,腹部大動脈破裂による仮性動脈瘤が疑われた.手術は腹部正中切開にて瘤へアプローチ,瘤周囲には強固な癒着を認めた.瘤切開後,後壁に欠損孔があり,陳旧性の血腫が充満していた.これを一部除去すると椎体がみえたため,腹部大動脈の慢性破裂 chronic contained ruptureと診断し,I字型人工血管置換術を施行した.術後経過は良好で,22日目に軽快退院となった.拡大を伴わない腹部大動脈にcontained ruptureが生じるのは稀であり,文献的考察を加え報告する.