抄録
要旨:症例は2 歳11 カ月の女児.検温時に右腋窩の腫瘤を指摘され,当初はリンパ節腫大と診断されていた.経過中に血管エコーで数珠状に連なる2 個の紡錘状の右上腕動脈瘤を認めた.血管造影では右上腕動脈瘤とともに左腋窩動脈から上腕動脈まで高度に狭窄する所見が確認された.手術は右上腕動脈瘤を切除し,大伏在静脈にて再建した.病理組織では内弾性板から外膜にかけての中膜の著明な粘液腫状肥厚と弾性線維の断裂,リンパ球浸潤を認めた.小児では上肢の発育を考慮した上腕動脈の血行再建は必須であり,グラフトは開存性,柔軟性,ねじれへの耐久性の観点から自家静脈が最もよい.患児は生後10 カ月のとき,原因不明の炎症の既往があり,血管造影所見と合わせると高安動脈炎が強く疑われる.本症例は上腕動脈瘤に対し,血行再建を行った本邦の最年少と思われる.