2013 年 22 巻 6 号 p. 931-934
要旨:症例は61 歳男性.急激な背部痛を自覚し,当院に救急搬送になった.胸腹部造影CT で急性大動脈解離DeBakey IIIb を認め,腎動脈下腹部大動脈瘤(最大短径45 mm)にまで解離が及んでいた.保存的降圧療法を施行したが,翌日右下肢のしびれを自覚し,疼痛に変化したため造影CT を施行.腎動脈下腹部大動脈瘤内で真腔,偽腔とも血流が途絶し,両側総腸骨動脈は閉塞していた.Entry 閉鎖と真腔血流を確保するために緊急で胸部ステントグラフト内挿術(TEVAR)を施行.続いて腹部大動脈瘤内の血流確保のため腹部ステントグラフト内挿術(EVAR)を施行し下肢血流は改善した.術後の造影CT で下行大動脈の偽腔にわずかに順行性の血流を認めたが,真腔は拡大しており,腹部分枝の血流は良好に保たれていた.腹部大動脈瘤内にエンドリークは認めず,経過良好にて自宅退院となった.