2014 年 23 巻 1 号 p. 43-47
要旨:リンパ漏を伴った鼠径部人工血管感染に対し,vacuum-assisted closure(VAC)療法と縫工筋弁充填を行い,良好な結果を得た.症例は78 歳男性で,腹部大動脈瘤に対して人工血管置換術を行い,末梢側は大腿動脈に吻合した.術後,右鼠径部創からリンパ漏を認め,感染を併発した.ドレナージ後,VACを開始した.開始後7 日でリンパ漏が消失し,感染所見の改善とともに創培養も陰性化した.VAC を25日間行い,肉芽形成は良好であったが,人工血管周囲に死腔が残存した.VAC 継続による創閉鎖に長期間を要すると判断し,縫工筋弁を充填した.創治癒は良好で筋弁充填から15 日後に退院し,感染の再燃は認めていない.VAC の適応や合併症の問題は未解決だが,VAC はリンパ漏に対する治療の有効な選択肢の一つになり得ると考える.また人工血管周囲の残存死腔への縫工筋弁充填は早期の創閉鎖と入院期間短縮に有効と考える.