抄録
要旨:成人で発見され手術を要した重複大動脈弓の報告は少ない.症例は23 歳女性.呼吸困難,嚥下困難を主訴に近医を受診し,胸部大動脈の異常を指摘され,当科へ紹介された.胸部CT にて,大動脈弓が左右にほぼ同径で存在し,完全な血管輪を形成していた.気管および食道は血管輪の中を走行しており,このため圧迫を受け狭窄していた.これに対し,右側方開胸アプローチ,部分体外循環補助下に右大動脈弓を切除,血管輪を開放し,右鎖骨下動脈は下行大動脈へ再建した.本疾患では大動脈壁の先天的脆弱性(Kommerell 憩室),圧迫部の気管軟化症などが存在する可能性が考えられたが,手術所見ではこれらは認められなかった.術後経過は良好で,自覚症状は消失し,とくに合併症なく軽快した.