抄録
要旨:重症上肢虚血に対し前腕部へのバイパス術を施行した1 例を経験したので報告する.患者は70 歳男性.右手指全体の色調不良・冷感および右第2 指の疼痛・痺れが出現し,その後右第4 指指尖に壊死が出現したため紹介となった.右上肢動脈造影にて,橈骨動脈および尺骨動脈は近位部で閉塞しており,橈骨動脈の遠位部は骨間動脈を介した側副血行によって造影された.経過中に壊死領域の拡大を認めたため,救肢目的に自家静脈を用いて右上腕動脈-橈骨動脈バイパス術を施行した.術後経過は良好で,11 カ月経過した現在も症状の再燃は認めていない.前腕部へのバイパス術の報告例は限られているが,重症上肢虚血に対する救肢目的の際には有用な方法と考えられた.