2015 年 24 巻 1 号 p. 36-39
要旨:症例は65 歳,男性.突然発症した呼吸困難のため救急車で来院した.来院当初,臨床所見,心エコーの右心負荷所見,D-dimer やFDP の高値から,肺塞栓症が強く疑われた.肺塞栓の存在を確認する目的で施行した造影CT で,腹部大動脈瘤から下大静脈へのシャント血流を認め,腹部大動脈瘤破裂による腹部大動脈-下大静脈瘻(aortocaval fistula; ACF)の診断に至った.直ちに緊急手術を施行し救命が可能であった.ACF はその病態から,発症急性期では肺塞栓症に類似した臨床像を呈することがあり,また,診断までの時間が予後を決定するため,診断には細心の注意が必要である.