2015 年 24 巻 7 号 p. 1021-1024
要旨:症例は75 歳男性.2003 年7 月感染性腹部大動脈瘤に対して大動脈を腎動脈下で閉鎖し,感染瘤切除,右腋窩-両側大腿動脈バイパス術を施行した.術後2 カ月間に2 回の血栓閉塞をきたしたため,knitted Dacron 人工血管で左腋窩-両側大腿動脈バイパス術を施行した.術後8 カ月頃から人工血管に沿って腫瘤が出現し,造影CT で漿液腫の診断.穿刺吸引により経過観察されていたが,巨大化したため当科紹介.2009 年5 月expanded polytetrafluoroethylene(ePTFE)人工血管を用いた左腋窩-両側大腿動脈バイパスを施行した.摘出人工血管の病理組織では,人工血管周囲はコラーゲン線維に乏しく,人工血管の治癒過程に問題があったことが示された.以降,患者が通院を自己中断するまでの1 年1 カ月間漿液腫の再発なく経過した.