日本血管外科学会雑誌
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Print ISSN : 0918-6778
講座
透析患者の血管病変の病理について
植田 初江 雨宮 妃
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キーワード: 慢性透析, 心血管病変, 病理
ジャーナル オープンアクセス

2022 年 31 巻 4 号 p. 263-268

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抄録

長期透析患者における血管心病変は動脈硬化が主体であり,とくに末梢の動脈では必発である.近年透析が適応となる患者の基礎疾患として糖尿病性腎症が増加しているが,透析前から存在する糖尿病性血管病変は透析によりさらに加速される.これまで透析患者の末梢血管病変はメンケベルグ型中膜石灰化症を示すと言われてきた.しかし,われわれの剖検例における病理学的解析では,長期透析患者の動脈硬化症の形態は典型的なメンケベルグ硬化症とはやや異なっていた.総括すると①通常の動脈硬化進展よりも,早期から動脈硬化症が出現する.②大動脈から末梢の筋性動脈,細動脈まで連続性に,板状石灰化が内膜を主体に認められる.③冠動脈硬化症による虚血性心疾患を高頻度に合併する.とくに冠動脈では内膜の石灰化を主体としたハードプラーク(AHA動脈硬化症分類AHA Class V)がソフトプラーク(AHA Class VI)よりも多く認められた,などであった.

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