2022 年 31 巻 6 号 p. 363-368
大動脈解離に対するステントグラフト(SG)留置(TEVAR)後特有の遠隔期合併症として,SG末梢端に生じる新規内膜亀裂(SINE)が重要である.SINEは大動脈解離に対するTEVAR後の4.8–25%に発生し,とくに慢性解離症例で発生頻度が高くなる.SINE発生のメカニズムとしてSGのoversize率・復元弾性力(spring back force)の関与が報告されており,発生回避には厳密な真腔口径計測に基づいたSGサイズ選択および復元弾性力による大動脈壁ストレスを減弱させるSG留置計画が必要となる.末梢に小口径デバイスを用いた積み上げ留置はこれらのリスク因子への対応が可能であり,SINE発生リスクを減少させる上で有用な留置戦略と考えられる.