水環境学会誌
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原著論文
水辺意識に着目した住民の都市河川金銭価値評価解析
大塚 佳臣栗栖 聖中谷 隼花木 啓祐
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2011 年 34 巻 2 号 p. 29-40

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抄録

本研究では,千葉県北西部をモデルに,都市中小河川に関する住民アンケートを行い,潜在セグメントロジットモデルを適用したコンジョイント分析によって,川に対する意識が,川の機能に対する金銭価値評価へ与える影響を解析した。普段利用/目にしている川(近隣河川)の機能に関する金銭価値評価は,近隣河川だけでなく水辺全般の経験によって形成された近隣河川への意識に応じて有意な差があることが示された。水辺経験が豊富で,川を自然環境の一つととらえる住民はアメニティ機能改善に,洪水や水質汚濁経験を有し,川に否定的な意識を持つ住民は治水機能改善に価値を認めていた。一方で,水辺自体に関心がない住民はあらゆる機能に価値を認めていなかった。河川整備を計画するにあたり,住民の対象河川への意識をもとに,優先機能の多様性を把握することは,整備の優先順位や予算配分を効率的に立案する上で極めて重要である。

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© 2011 公益社団法人 日本水環境学会
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