2011 年 34 巻 9 号 p. 125-141
琵琶湖を取り巻く流域の水環境を把握し,各種水質保全施策による湖内水質の応答を予測するためには,陸域からの負荷流出過程と湖内における水・物質の循環・反応過程を精度よく再現できるシミュレーションモデルが必要である。本研究では,琵琶湖の流動・生態系を考慮した3次元モデルに,陸域における水物質循環の物理的過程を考慮した分布型モデルを結合し,気象や社会条件等を考慮した非定常解析が可能な「琵琶湖流域水物質循環モデル」を構築した。この計算結果について検証を行ったところ,野洲川や日野川等主要河川の流量や水質,および湖内水温の変化,湖内水質の年平均値や変動特性について良好な再現結果が得られた。その一方,湖内水質の時系列変化や南湖の水質分布については再現性が十分でない期間や地域が見られ,湖内水質を短期的・局所的に評価することには課題が残った。