水環境学会誌
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34 巻, 9 号
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原著論文
  • 魚野 隆, 濱口 昂雄, 久米 幸毅, 細谷 和海
    原稿種別: 原著論文
    2011 年34 巻9 号 p. 109-114
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/10
    ジャーナル フリー
    メダカは,遺伝的特徴によって北日本集団と南日本集団に大きく二分される。両集団は,京都府由良川水系において側所的に分布しているにもかかわらず,それぞれ純系を維持している。このことは,両集団間に生殖的隔離が成立していることを示唆している。そこで,両集団の生態的分化の程度を探る一環として,京都府由良川水系の南北集団を用いて,通常時と刺激を与えた時の群れ行動について比較実験を行った。通常時では,南日本集団は北日本集団より小さな魚群半径を形成した。しかし,4尾の場合では魚群半径にばらつきが見られた。刺激を与えた時では,南日本集団は一度分散した後,密集し,静止した。一方,北日本集団は活発に動いていたが,冬期に南日本集団と同様に静止することを確認した。以上の結果から,南北集団間で群れ行動が異なることが確かめられ,そのことから地域性を無視した放流は生態的地域固有性を失わせるものと危惧された。
  • 増木 新吾, 相崎 守弘, 坂本 勝弘
    原稿種別: 原著論文
    2011 年34 巻9 号 p. 115-123
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/10
    ジャーナル フリー
    本研究では,2004~2008年にかけて三瓶ダム湖底層水の水温成層の形成時期や溶存酸素の分布について調査を行った。2006年には酸素供給装置(松江土建株式会社:WEP system)を用いてダム湖底層水に高濃度酸素水を供給する実験を行った。その結果,水温躍層は水深12 m(EL:115 m)にあり,躍層以深の水温は年間を通じて7℃程度であった。冬季の上下循環により底層水(528,000 m3)に運び込まれる酸素量は5,000~6,000 kgであり,底層水全体における酸素消費速度は58.6~32.0 kgO2・d-1であったことから夏期には完全に枯渇することがわかった。WEPシステム運用時期における水温成層の破壊はなく,高濃度酸素水は装置から上流800 mまで拡がり,運用開始4週間後にはダム湖底層全体の8.7 haの面積に拡がった。この時,酸素供給効率は82~87%であった。
  • 佐藤 祐一, 小松 英司, 永禮 英明, 上原 浩, 湯浅 岳史, 大久保 卓也, 岡本 高弘, 金 再奎
    原稿種別: 原著論文
    2011 年34 巻9 号 p. 125-141
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/10
    ジャーナル フリー
    琵琶湖を取り巻く流域の水環境を把握し,各種水質保全施策による湖内水質の応答を予測するためには,陸域からの負荷流出過程と湖内における水・物質の循環・反応過程を精度よく再現できるシミュレーションモデルが必要である。本研究では,琵琶湖の流動・生態系を考慮した3次元モデルに,陸域における水物質循環の物理的過程を考慮した分布型モデルを結合し,気象や社会条件等を考慮した非定常解析が可能な「琵琶湖流域水物質循環モデル」を構築した。この計算結果について検証を行ったところ,野洲川や日野川等主要河川の流量や水質,および湖内水温の変化,湖内水質の年平均値や変動特性について良好な再現結果が得られた。その一方,湖内水質の時系列変化や南湖の水質分布については再現性が十分でない期間や地域が見られ,湖内水質を短期的・局所的に評価することには課題が残った。
  • 藤井 暁彦, 関根 雅彦, 尾添 紗由美, 萩原 淳子, 角野 浩二
    原稿種別: 原著論文
    2011 年34 巻9 号 p. 143-152
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/10
    ジャーナル フリー
    アサリ資源の回復を目的として山口湾で実施されている自然再生事業の効果について検討した。山口湾にはナルトビエイやイシガニなどのアサリ食害種が生息し,資源の回復を阻害していると推察された。保護網の設置は,食害を防止する効果的な手法であり,成貝が1年以上維持された。また,耕耘により底質硬度が低く維持された保護網区では,多数のアサリ稚貝が生残し,これは夏季の底質の高温化が低減されたためと考えられた。資源回復の方法を検討するため,捕食者による食害と漁獲による取り出しを組み込んだアサリ資源の管理モデルを構築した。計算の結果,食害影響を取り除くと,アサリ資源は4年間で約10倍になると試算され,かつての漁獲に見合う資源量を回復するためには,食害影響を現状の1割以下に低減する必要があることが示された。持続的なアサリ資源の維持のためには,これら食害影響の低減とともに,漁獲量の管理も重要であると考えられた。
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