抄録
レチノイン酸(RA)の結合を介して形態形成等の制御を担っているRA受容体(RAR)は,そのシグナル伝達の過剰発現により催奇形性作用をもたらす可能性がある。これまでの研究から,下水中にはRARアゴニストが常に存在し,その主要物質がall-trans RA(atRA),13-cis RA(13cRA),4-oxo-atRA,および4-oxo-13cRAであることが特定された。本研究では,これら4物質の下水処理過程における挙動の解明を目的として,都市下水処理場における4物質の挙動とRARアゴニスト活性の推移を調査した。その結果,RA類と4-oxo-RA類は,時季や処理方式によらず,活性汚泥処理によって良好に除去されることが明らかとなり,処理過程で未知のRARアゴニストが生成する可能性もあるが,現在の放流水のRARアゴニストレベルでは水生生物に対して直ちに生体影響が生じる可能性は低いと考えられた。