抄録
活性炭を用いた溶存硫化物の酸化処理促進技術は,酸化処理後の硫黄形態やその存在比,および酸素消費量について,まだ十分に明らかにされていない。そこで,溶存硫化物の酸化前後の形態と酸素消費量を明らかにするために,バイアル瓶を用いたバッチ式の酸化処理実験を行った。その結果,活性炭の触媒作用によって硫化水素イオンは,硫酸イオン,チオ硫酸イオンに酸化されて溶存していることが確認できた。次に,X線光電子分光分析装置を用いて,活性炭表面にある元素とその電子状態を分析した結果,活性炭に保持された硫黄成分は,元素状硫黄であることが示唆された。また,酸化処理前後の硫黄と酸素の化学量論について計算した結果,それぞれ84%と82%の物質収支を推定することが出来た。さらに,酸化後の硫黄成分の生物毒性について調べた結果,硫化水素イオンは活性炭を用いた酸化により,毒性の低い酸化物になっていることを確認した。