抄録
就学移行期の支援の重要性は認識されており,効果を上げている実践も認められている. しかし,実際には,管轄の異なる機関間および多職種との連携が必要であるため,仮に移行のため のツールが整備されてもその活用が不十分に終わってしまう等の課題が残されている.本稿では, 特別支援学校の地域コーディネーターが前述の課題解決を目的に実践した,地域の就学期の移行支 援システムづくりについて報告する.地域コーディネーターと地域のキーパーソンとの協働による 巡回相談を基盤とした地域の支援体制づくりは,移行支援会議の設定をはじめとして着実に効果を 上げ,実質的な移行支援が行われるという結果を生んだ.その経過と結果を事例に基づいて示した うえで,移行支援体制の基盤とした「就学支援の機能をもった」巡回相談の仕組みを提示した.そ して,実践の効果や先行研究もふまえ,就学支援における巡回相談の役割と機能および地域コー ディネーターのもつ可能性について考察する.