水環境学会誌
Online ISSN : 1881-3690
Print ISSN : 0916-8958
ISSN-L : 0916-8958
原著論文
四万十川源流部の森林における硝酸態窒素の年間流出負荷量とその流出機構
篠宮 佳樹山田 毅稲垣 善之吉永 秀一郎鳥居 厚志
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 37 巻 3 号 p. 91-101

詳細
抄録
国内でも多雨地域にある四万十川源流の森林流域を対象に,大雨時のNO3-濃度形成過程について検討するとともに,大規模出水時も考慮して年間の硝酸態窒素(NO3--N)流出負荷量を評価した。試験流域(堆積岩,18.7 ha,モミ・ツガ天然林)で,月2回の定期採水と17回(総雨量18~289 mm)の出水調査を行った。NO3--N累加比負荷量の流量以外の説明変数として降雨前NO3-濃度が有効であることを示した。この変数を加えた修正ΣL-ΣQ法で求めた年間の硝酸態窒素流出負荷量は3~5 kg·ha-1·yr-1となり,年雨量,年流量に依存しなかった。この要因は大規模出水時に渓流水のNO3-濃度が顕著に低下し,累加比負荷量の増加が頭打ち傾向になるためであり,NO3-濃度の顕著な低下は渓流近傍から遠い斜面の下層や深層の地中水(極めて低いNO3-濃度)が大規模出水の初期を除き流出に大きく寄与するためと考えられた。
著者関連情報
© 2014 公益社団法人 日本水環境学会
前の記事 次の記事
feedback
Top