水環境学会誌
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調査論文
甲府盆地における降水中の硝酸性窒素の降下量変動に及ぼす地形ならびに微気象の影響
米山 由紀馬籠 純風間 ふたば
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2018 年 41 巻 5 号 p. 141-149

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抄録

適切な森林・水源域管理のため, 大気中の窒素動態とその森林への降下に関する理解が望まれている。本研究では, 甲府盆地域 (4地点, 2012年5月~2013年3月) とその北部縁辺部 (3地点, 2010年4月~2013年3月) の降水中の硝酸性窒素を観測した。その結果, 硝酸性窒素降下量は夏季に多く, 降水中の硝酸の窒素・酸素安定同位体比値は大気由来の硝酸の範囲内であることが明らかとなった。特に, 盆地北部縁辺部に位置する地点のうち荒川扇状地扇頂部とその上流の地点では, 周辺が山林・畑地にもかかわらず, 硝酸性窒素降下量が市街地である盆地内を大きく上回り窒素飽和の目安を超過していたが, 同じ北部縁辺部で東南に約5 km隔てた甲府駅北側付近では, 同様の状況は見られなかった。この地点間の違いは, 盆地で発生した窒素酸化物の移流に卓越風・山谷風といった大気の流れを引き起こす対象地域の地形・微気象が関連していると推察された。

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© 2018 公益社団法人 日本水環境学会
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