水環境学会誌
Online ISSN : 1881-3690
Print ISSN : 0916-8958
ISSN-L : 0916-8958
調査論文
柱状堆積物中の各種指標元素濃度に基づく中海の富栄養化の歴史トレンド解析
楠 賢司坂田 昌弘
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 41 巻 5 号 p. 151-157

詳細
抄録

中海の過去約100年間における富栄養化の歴史トレンドに関する知見を得るため, 湖内の2地点から採取された柱状堆積物について全有機炭素 (TOC) , 全窒素 (TN) , 全硫黄 (TS) 及びモリブデン (Mo) 濃度の鉛直分布を調べた。堆積物中のTOC及びTNは主に植物プランクトンに由来し, それらの濃度は1950年頃より急激に増加した。堆積物表層 (0-2 cm) のTSの大部分は硫化物であることから, 堆積物表面付近で硫化物が大量に沈積していることがわかった。そこで, 硫化物の生成は大部分が堆積物上層 (0-10 cm) で起こると仮定すると, TS濃度の鉛直分布は, 1950年代以降で有機物生産量が増大したことにより湖底付近の貧酸素水塊が拡大し, 堆積物内での硫化物の生成量が年々増加してきたことを示唆する。Mo濃度の鉛直分布は, TS濃度に類似しており, 中海における有機物生産量の経年変化に関係付けられることがわかった。

著者関連情報
© 2018 公益社団法人 日本水環境学会
前の記事
feedback
Top