栄養塩の流入負荷の減少による「貧栄養化」の問題が指摘される水域が存在する。本研究では, 近年栄養塩負荷の減少に伴って漁獲量の減少がみられる琵琶湖を対象として, 今後の栄養塩負荷の増減が魚類をはじめとする高次生態系のバイオマス等に与える影響を食物連鎖モデルにより予測した。構造の異なる3種類のモデルを構築し, 各モデルのパラメータセットをモンテカルロ法により100パターン選定した。その結果, 植物プランクトンについては, モデル構造によらず栄養塩負荷の増減に概ね比例するようにバイオマスが変化する傾向がみられた。一方で魚類については, モデル間あるいは食性による差が大きく, 流入負荷が増加してもバイオマスが減少するケースなどがみられた。予測の不確実性を考慮すれば, 琵琶湖の魚類を増やすことを目的とした安易な栄養塩の添加は, 水質は悪化するが魚類は増えないなど, 望まない結果をもたらす可能性が示唆された。