水環境学会誌
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42 巻, 4 号
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研究論文
  • 佐藤 祐一, 早川 和秀
    原稿種別: 研究論文
    2019 年42 巻4 号 p. 133-143
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
    ジャーナル フリー
    電子付録

    栄養塩の流入負荷の減少による「貧栄養化」の問題が指摘される水域が存在する。本研究では, 近年栄養塩負荷の減少に伴って漁獲量の減少がみられる琵琶湖を対象として, 今後の栄養塩負荷の増減が魚類をはじめとする高次生態系のバイオマス等に与える影響を食物連鎖モデルにより予測した。構造の異なる3種類のモデルを構築し, 各モデルのパラメータセットをモンテカルロ法により100パターン選定した。その結果, 植物プランクトンについては, モデル構造によらず栄養塩負荷の増減に概ね比例するようにバイオマスが変化する傾向がみられた。一方で魚類については, モデル間あるいは食性による差が大きく, 流入負荷が増加してもバイオマスが減少するケースなどがみられた。予測の不確実性を考慮すれば, 琵琶湖の魚類を増やすことを目的とした安易な栄養塩の添加は, 水質は悪化するが魚類は増えないなど, 望まない結果をもたらす可能性が示唆された。

技術論文
  • 中村 洋祐, 大塚 将成, 治多 伸介, 大森 大輔
    原稿種別: 技術論文
    2019 年42 巻4 号 p. 145-154
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
    ジャーナル フリー
    電子付録

    著者らは, リン資源回収のために硫黄酸化細菌の生成する硫酸によりし尿汚泥焼却灰からリンを溶出させるバクテリアリーチングの技術を利用した。現地の環境に適した実用的な集積株を確保し, 単純で経済的な培地組成とすることを目的とした。し尿処理施設からの採取試料を硫黄酸化細菌用の培地で集積培養し3種類の集積株を確保した。内2種類は比較対照用の硫黄酸化細菌 (NBRC株) 以上の硫酸生成, リン溶出を示し, クローンライブラリー解析の結果それぞれ7種類と5種類のAcidithiobacillus属の菌株で構成されていた。1種類の集積株は能力的にNBRC株に及ばなかった。これは他に比べ生育温度の高いA. caldusのみで構成されていたためと考えられた。培地成分は当初の11成分の内7成分が削減可能で, 硫黄も安価な脱硫硫黄が使用可能であった。これら培地削減等でも硫酸生成能力は変わらず, 培地調製単価は当初の1/18となった。

調査論文
  • 大瀧 雅寛, 鴻田 真璃亜
    原稿種別: 調査論文
    2019 年42 巻4 号 p. 155-161
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
    ジャーナル フリー

    環境基準および排水基準における指標菌の変更を鑑み, 3箇所の下水処理場の流入水および二次処理水中の大腸菌および大腸菌群の濃度変動および紫外線耐性の変動を調査した。大腸菌および大腸菌群の存在濃度について, 下水流入水および二次処理水ともに季節変動, 集水方式, 処理方式による有意な変動は見られなかった。二次処理水を対象とした紫外線照射実験を行った結果, 大腸菌群よりも大腸菌の紫外線耐性が高い傾向が見られた。しかし紫外線照射後に光回復させた後の濃度を基にして算定した紫外線耐性においては有意な差は見られなかった。これらの耐性については季節変動, 日内変動, 処理場間に著しい差は確認されなかった。流入下水においても同様な実験を行った結果, 大腸菌群と大腸菌の紫外線耐性は同等であり, 光回復後の濃度を基にして算定した耐性についても同等であった。

  • 鈴木 まゆみ, 小瀬 知洋, 大野 正貴, 玉置 仁, 川田 邦明
    原稿種別: 調査論文
    2019 年42 巻4 号 p. 163-169
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
    ジャーナル フリー
    電子付録

    東日本大震災における東北太平洋沖津波によって宮城県奥松島に位置する波津々浦湾干潟はかく乱を受け, アサリなどの底棲生物が大きく減少し, その後回復しなかったことが知られている。本研究では, この波津々浦湾干潟における震災後の回復過程に対する底質環境の変化への沿岸工事の影響を明らかにするために, 干潟底質および排水口からの流入物の金属組成に基づくクラスター分析および主成分分析によって, 干潟底質環境の変化の原因を検討した。その結果, 湾奥に位置する防潮堤工事に伴う埋立現場の排水口からの流入物および湾外からの何らかの流入物の影響が確認された。また, 第一の検討における諸原因の干潟底質に対する影響の空間的分布を検討した。その結果, 湾奥においては排水口からの流入物の影響が強く, 湾口においては, 湾外からの何らかの流入物の影響が強かった。湾中央部の干潟底質において, この負荷の影響は他の場所と比較して小さかった。

  • 飯尾 恒, 吉田 繁樹, 北村 立実, 松本 俊一, 黒田 久雄
    原稿種別: 調査論文
    2019 年42 巻4 号 p. 171-176
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
    ジャーナル フリー

    茨城県のレンコン出荷量は全国一位であり, 全国のレンコン収穫量, 出荷量の半分近くを占めている。茨城県土浦市手野地区はレンコン専作地帯で, 1995年から2015年にかけて日本で初めてハス田群で基盤整備を実施し, コンクリート畦畔整備や用排分離等を行った。本研究では基盤整備された手野地区において流出負荷量調査を行い, 基盤整備による流出負荷量の影響を調査した。ハス田群からの排出負荷量を検討した結果, SS, COD, TNは3月から4月にかけて最大の値を示し, その要因として石灰窒素施用, 基肥施肥の影響が考えられた。TPは土壌が嫌気状態になりやすい7月から8月にかけて最大の値を示した。一年間の差引負荷量は基盤整備前と比べ, SS, COD, TN, TP全てで増加し, その要因として用排分離を整備したことにより, 田越灌漑の沈殿効果が消失した影響が考えられた。

  • 陣野 宏宙, 浦 伸孝, 桑岡 莉帆, 橋本 京太郎, 植野 康成
    原稿種別: 調査論文
    2019 年42 巻4 号 p. 177-184
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
    ジャーナル フリー

    諫早湾干拓調整池及びその流入河川等における有機物特性の把握を目的として, 有機物の分光学的特性 (紫外部吸光度, 三次元励起・蛍光スペクトル法) や化学的特性 (脂肪酸分析) の違いを利用した難分解性有機物等の特性把握及び起源推定に関する研究を実施した。その結果, 調整池やその流入河川等における溶存有機物は土壌由来のものが優位であることが示唆された。なお, 溶存態の難分解性有機物にはフミン物質, 易分解性有機物にはタンパク質が含まれていることが推察された。また, 懸濁有機物に関して, 調整池やその流入河川等において植物プランクトン由来の有機物は比較的易分解性であり, 陸上植物に由来する懸濁有機物は植物プランクトン由来の懸濁有機物より微生物分解されにくいことが示唆された。

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