2019 年 42 巻 4 号 p. 145-154
著者らは, リン資源回収のために硫黄酸化細菌の生成する硫酸によりし尿汚泥焼却灰からリンを溶出させるバクテリアリーチングの技術を利用した。現地の環境に適した実用的な集積株を確保し, 単純で経済的な培地組成とすることを目的とした。し尿処理施設からの採取試料を硫黄酸化細菌用の培地で集積培養し3種類の集積株を確保した。内2種類は比較対照用の硫黄酸化細菌 (NBRC株) 以上の硫酸生成, リン溶出を示し, クローンライブラリー解析の結果それぞれ7種類と5種類のAcidithiobacillus属の菌株で構成されていた。1種類の集積株は能力的にNBRC株に及ばなかった。これは他に比べ生育温度の高いA. caldusのみで構成されていたためと考えられた。培地成分は当初の11成分の内7成分が削減可能で, 硫黄も安価な脱硫硫黄が使用可能であった。これら培地削減等でも硫酸生成能力は変わらず, 培地調製単価は当初の1/18となった。