2020 年 43 巻 3 号 p. 63-68
岩見沢市において実施されている下水汚泥の肥料利用を, 産業廃棄物処理を行った場合を対照として事業評価した。同評価では, それぞれの事業を行った場合の岩見沢市の産業連関表を作成し, 粗付加価値総額の差額を求めた。産業連関表は, 環境省が頒布する産業連関表をもとに, 各々の事業費および事業の経済構造を反映して作成した。事業費は岩見沢市の実績値を用いた。事業評価の結果, 下水汚泥の肥料利用は産業廃棄物処理に対して事業費差額 (15.7百万円 year-1) 以上の粗付加価値 (19.6百万円 year-1) をもたらすと推計された。また, 肥料利用事業の持続には, 汚泥乾燥機の取り扱いが議論となると指摘した。下水汚泥の肥料利用は, 地域内の事業者によって実施され, 地域内の需要を喚起する。このことは地域内の経済波及効果として期待され, 本評価はこの点を確認した。本評価は地域性の強い事業評価において有効と考えられる。