水環境学会誌
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研究論文
クロロエチレン類の脱塩素化に用いる水素供与体としてのグルコン酸の汎用性
藤井 雄太三塚 和弘緒方 浩基井上 大介池 道彦
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2021 年 44 巻 4 号 p. 69-77

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抄録

本研究では, 地下水中におけるクロロエチレン類の嫌気分解を誘導する水素供与体としてのグルコン酸の汎用性を検証することを目的とした。クロロエチレン類で汚染された様々なサイトから採取した, 微生物叢の異なる5種類の地下水を対象として, グルコン酸を水素供与体として用いたトリクロロエチレン (TCE) の分解実験を行った。その結果, 脱塩素化速度は地下水により異なったが, 全ての地下水において脱塩素化に関連する遺伝子数が顕著に増加し, 最終的にクロロエチレン類の完全脱塩素化が達成された。当初はTCEの完全脱塩素化に長期間を要した地下水でも, グルコン酸の添加を繰り返すことで, 有害な代謝物であるクロロエチレン (VC) を残存させず, 完全脱塩素化を速やかに進行させることが可能となった。以上の結果から, グルコン酸は多様な地下水においてクロロエチレン類の完全脱塩素化を可能にする, 汎用性の高い水素供与体であることが示された。

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© 2021 公益社団法人 日本水環境学会
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