2022 年 45 巻 3 号 p. 107-114
水処理プロセスにおける亜酸化窒素 (N2O) 生成を制御する新しい操作因子として, 様々な生物の情報伝達物質として注目されている一酸化窒素 (NO) の利用可能性を検討した。無機基質を用いて硝化細菌を培養し, 回分式運転における曝気工程または撹拌工程にNOを散気することで, 硝化性能及びN2O生成に及ぼす影響を調べた。その結果, 曝気工程及び撹拌工程のいずれの場合も, NO散気は硝化性能とN2O生成とを共に促進する傾向を示した。次に, N2O生成の強力な影響因子である亜硝酸や溶存酸素 (DO) の影響を転換率モデルを用いて排除し, NOの直接的な影響を検討したところ, 曝気工程でのNO曝露はN2Oの生成を抑制し, 撹拌工程での曝露は逆に, 生成を促進する結果が得られた。これらの結果は, 曝気槽及び最終沈殿池など水処理系内におけるNO濃度の適切な制御によって, N2Oの生成抑制が可能であることを示したものと考えられる。