2022 年 45 巻 4 号 p. 171-180
底質中の重金属含有量を正確に測定するため, 近年普及が進んでいるマイクロ波分解法を用いた方法を検討することを目的とした。ケイ素を含む試料の分解にはフッ化水素酸の添加が必須である一方, Ca, Mg, Alを含む難溶性白色沈殿を生成する。今回, ケイ砂を多く含む干潟底質のマイクロ波分解により生じた沈殿を走査電子顕微鏡 (SEM) で観察し, 沈殿にはFe, Mn等の重金属元素が含まれていることが新たに明らかとなった。そこで過塩素酸による加熱処理によって沈殿を分解し, 残渣を少なくする分析方法に改善した。この分析方法の様々な環境試料への適用性を確認した結果, Cr, Cu, Znの含有量がそれぞれ平均して40%, 20%, 18%増加したことが明らかになった。本研究にて検討した方法は, 底質中の重金属含有量をより効率的な定量を可能とし, 将来的に生態系保全に係る基準や分析方法を定める際に有効であることが示された。