水環境学会誌
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研究論文
富栄養化した溜池における底泥からの栄養塩溶出に及ぼす池干しの影響
手塚 公裕
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2024 年 47 巻 1 号 p. 1-14

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抄録

池干しは水を抜くのみと簡便かつ低コストで実施できる伝統的な水質浄化法である。しかし, 池干し効果を定量的に評価した事例は少ない。また, 底泥からの栄養塩溶出を抑制するメカニズムは明らかになっていない。そこで, 本研究では, 富栄養化した溜池 (福島県南湖) の底泥を用いた実験により, 池干しが底泥からの栄養塩溶出に及ぼす影響について検討した。その結果, 以下の知見が得られた。1) 池干し期間が長いほど, 底泥からの窒素, リンの溶出は抑制される。池干し30日間では, 嫌気条件における溶出フラックスの削減率は, DT-Nで71%, DT-Pで83%であった。2) 池干しによって生じる底泥間隙水中の窒素濃度の増加よりも底泥間隙率の減少の影響が卓越したため, 底泥からの窒素溶出が抑制されたと推測される。3) 池干しによって生じる底泥間隙水リン濃度の低下と底泥間隙率の減少の両方が, 底泥からのリン溶出の抑制に寄与したと考えられる。

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