水環境学会誌
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47 巻, 1 号
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研究論文
  • 手塚 公裕
    原稿種別: 研究論文
    2024 年 47 巻 1 号 p. 1-14
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/10
    ジャーナル フリー

    池干しは水を抜くのみと簡便かつ低コストで実施できる伝統的な水質浄化法である。しかし, 池干し効果を定量的に評価した事例は少ない。また, 底泥からの栄養塩溶出を抑制するメカニズムは明らかになっていない。そこで, 本研究では, 富栄養化した溜池 (福島県南湖) の底泥を用いた実験により, 池干しが底泥からの栄養塩溶出に及ぼす影響について検討した。その結果, 以下の知見が得られた。1) 池干し期間が長いほど, 底泥からの窒素, リンの溶出は抑制される。池干し30日間では, 嫌気条件における溶出フラックスの削減率は, DT-Nで71%, DT-Pで83%であった。2) 池干しによって生じる底泥間隙水中の窒素濃度の増加よりも底泥間隙率の減少の影響が卓越したため, 底泥からの窒素溶出が抑制されたと推測される。3) 池干しによって生じる底泥間隙水リン濃度の低下と底泥間隙率の減少の両方が, 底泥からのリン溶出の抑制に寄与したと考えられる。

  • 小杉 知佳, 吉村 航, 加藤 敏朗, 小松 伸行, 古賀 あかね, 今尾 和正, 中村 航, 佐々木 淳, 中村 由行
    原稿種別: 研究論文
    2024 年 47 巻 1 号 p. 15-25
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/10
    ジャーナル フリー

    底質材料としての固化しないカルシア改質土の有効性について, メソコスム水槽を用いて浚渫土砂単独を底質材料とした場合との比較実験を行い, それぞれに形成された干潟浅場生態系を比較して調べた。固化しないカルシア改質土は, 港湾浚渫で発生する土砂と製鉄副産物である転炉系製鋼スラグで構成し, その粒度分布や配合割合により, 製鋼スラグによるセメント固化を低減し, アマモや埋在性の底生生物が生息できるよう改善した混合土である。本研究では, 実海域適用前の検討として, 干潟・浅場一体型メソコスムを使った2年間の長期評価を行い, 2基のうち一方を実験区とし浚渫土砂と製鋼スラグの混合土を, もう一方は対照区として浚渫土砂のみを敷設した。実験区, 対照区のいずれの底質にも潜砂性のマクロベントスが観察された。アマモの生育は, 底質の安定化により光環境が改善した実験区で, 対照区よりも多く生育した。以上より, アマモ場および底生生物の生育に適した底質環境を創出できたと考える。

技術論文
  • 吉野 謙司, 谷口 崇至, 中野 和典
    原稿種別: 技術論文
    2024 年 47 巻 1 号 p. 27-35
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/10
    ジャーナル フリー

    ひとつのろ床内で好気処理と嫌気処理の双方を強化する新たなハイブリッドシステムとして, パイロットスケールの多段人工湿地の2段目及び3段目ろ床の上半分に干満流を, 下半分に部分飽和を適用したハイブリッドろ床を導入し, 下水浄化性能を検証した。その結果, BOD及びNH4+-Nについては, ろ材の種類に関わらず97%以上の極めて高い除去率が達成できた。T-N及びT-Pについては, ゼオライト及びケイ酸カルシウムをろ材として組み合わせたろ床を含む条件において, それぞれ31及び46%の除去率が得られた。本研究により, 多段人工湿地に干満流と部分飽和を組み合わせたハイブリッドろ床を導入することで, 従来の鉛直流人工湿地と水平流人工湿地を組み合わせるハイブリッドシステムよりも良好な下水浄化性能が得られることをBOD, NH4+-N及びT-Pでは確認することができたが, T-N除去性能の改善には至らなかった。

調査論文
  • 藤原 建紀, 鈴木 元治
    原稿種別: 調査論文
    2024 年 47 巻 1 号 p. 37-46
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/10
    ジャーナル フリー
    電子付録

    閉鎖性海域の全窒素 (TN) ・全リン濃度は経年的に低下しているにも拘わらず, 化学的酸素要求量 (COD) は低下せず, 逆にCOD上昇がみられる。前報では, 海域のTN低下による有機物の組成変化 (C:N比上昇) が示され, これによる有機物の難分解化が示唆された。本報では瀬戸内海において同様な解析を行うと共に, 難分解化によるCOD上昇について調べた。これらにより以下の結果が得られた。TN削減により, 海域の有機物の組成変化と難分解化が起きた。この両者がCODを下げない方向に作用した。有機物の組成変化によって, 海域の全有機態窒素 (TON) は顕著に低下したものの, CODは低下しなかった。CODの難分解化によって, CODの生産量が増えなくても, 濃度が上昇する海域があった。調べたいずれの海域においても, 1990年以降, TN削減によって海域のCODは低下せず, 閉鎖性の強い水域では, 逆にCODが上昇した。

  • 泉水 仁, 中川 鉄水, 浅田 祥司, 吉本 隆光, 木之下 幸一郎, 米倉 勲, 小城 宣啓, 大塩 愛子, 福本 晃造
    原稿種別: 調査論文
    2024 年 47 巻 1 号 p. 47-53
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/10
    ジャーナル フリー
    電子付録

    安全な飲用水の供給不足に悩む開発途上国は高温多湿地域が多いが, 錆やカビの発生防止に除湿機が使われている。除湿機から発生する水 (除湿水) は汚いイメージがあり捨てられているが, 沖縄をモデルケースとして年間を通して水質・水量調査を行ったところ, 水質に関しては水道水に含まれる不純物の濃度が119.821 mg L-1 (主成分:Cl- 34.315 mg L-1, Ca2+ 28.636 mg L-1, Na+ 25.658 mg L-1, SO42- 23.293 mg L-1) に対して, 除湿水は調査期間の平均が11.730 mg L-1 (主成分:TOC 6.985 mg L-1, NH4+ 3.760 mg L-1) という結果が得られ, 除湿水はいずれの季節でも水道水と比べて不純物量が少ないことがわかった。またコンプレッサー式除湿器は部屋を閉め切っても調査期間の平均が6.22 L day-1 (定格の約62%) の除湿水を年間で得られ, ゼオライト式 (3.16 L day-1 (定格の約39%) ) より多量の水が生成されることが分かった。このことから, 除湿水は適切に処理すれば低コストで飲用水など様々な目的の水として活用が期待できる。

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