本研究では, 生物反応槽の亜酸化窒素 (N2O) 連続データにおいて, 今まで短期的な変動が大きいために把握できなかった数日程度の中期的変動を抽出することを目的とした。2019年に下水処理場の無終端水路反応槽において取得した溶存態N2O濃度の約一カ月間の連続データを使用し, そのデータ特性を確認した上で, ノンパラメトリックな季節調整法であるSTL分解のアプローチを適用した。その結果, 溶存態N2O濃度の短期的な日内変動を排除しつつも時系列データとしての連続性を保持した中期的変動を観測することができた。また, この変動における特徴的なピークは, 直前の降雨の有無によって異なる流入量変動で説明することができた。したがって, 統計学的な亜酸化窒素生成モデルの構築を見すえた場合は, 降雨の影響を考慮する必要があることが示された。