2025 年 48 巻 p. 39-50
水質管理施策を検討する際には, 低次生態系モデルを用いた水質への影響予測が行われる。低次生態系モデルを構成する植物プランクトンの増殖および栄養塩摂取式は, 既往研究により様々提案されているが, 貧栄養環境における植物プランクトンの応答について, 式ごとの計算結果の差異は明らかにされていない。本研究では閉鎖系の1ボックス低次生態系モデルを構築し, 異なる増殖・摂取式を用いることによる貧栄養環境での植物プランクトンの変動の差異を比較した。植物プランクトンのバイオマスは, 細胞組成比であるN/C比およびP/C比を固定しないモデルで固定するモデルに比べて大きくなった。これは, 固定しないモデルでは周囲水の栄養塩濃度の低下に応じて細胞組成比が低下し, 増殖に必要となる栄養塩量が減少することが原因であった。周囲水の栄養塩濃度は, 細胞内栄養塩量を考慮したモデルで低下がみられ, 貧栄養環境を表現しやすいと考えられた。