水質汚濁研究
Print ISSN : 0387-2025
中禅寺湖のアワ発生機構(1) アワ成分とその起源についての検討
世取山 守小山 次朗池田 浩三小林 紀男
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1987 年 10 巻 1 号 p. 31-38,29

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抄録
1984年9月に中禅寺湖で異常発生したアワの原因について検討した。その結果,アワ発生時湖水の凍結乾燥物の約1/3がアラビノース等を主体とする糖類であり,その時の湖水ロ液の糖濃度が2.25mg・l-1と高い値を示していることから,糖類がアワの主成分の1つであることが推定された。そこで湖水中糖類の起源を調べるため,水生植物および陸上植物落葉の糖類溶出試験を行ったところ,中禅寺湖の水生植物の中で優占種となっているササエビモおよびコカナダモの枯死草体から最高で約100mg・l-1の糖類溶出が認められた。また,落葉からは試験開始5日後に66mg・l-1という急速な糖類溶出が認められた。さらに各植物体およびその溶出液に含まれる糖の組成とアワ発生時湖水の凍結乾燥物のそれが類似していることから,このアワの主成分の1つは植物由来の多糖であり,その主な起源はアワ発生初期である9月には水生植物,さらに秋,冬期には落葉も関与するものと考えられる。
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© 社団法人日本水環境学会
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