抄録
し尿処理施設から排出される放流水は水質汚濁防止法や廃棄物の処理および清掃に関する法律により規制されているが, 公共用水域の水質汚濁防止から地方自治体の多くはこれらよりはるかに厳しい基準値を定めている。そのためし尿処理施設では既存の施設を改造したり, 標準的な処理設備に種々の高度処理設備を負荷して対処している。
そこで, これら施設の改良・保全を必要とする事例が生じた, あるいは生じる可能性がある施設の現状についてその実態を解析した。その結果,
都道府県別にみた施設規模, 処理方式には特異な傾向があり気候等の地域特性や法規制上の制約を反映していた。
施設規模では日処理能力50klから150kl程度の施設が約半数を占めていた。また, 施設規模の大小は処理方式によらない。
し尿処理施設の計画処理量は年々増強される傾向にある。昭和59年度以降に建設されるし尿処理施設を予測したところ, 毎年およそ80施設となった。しかしながら, 施設全体の約1/3が15年以上経過した老朽化施設に依存している。
嫌気性消化処理方式や化学処理方式が減少する傾向にあり, これに代わり低希釈二段活性汚泥処理方式や高負荷酸化処理方式が増加している。し尿処理施設の処理率からみるとほぼ大半の施設が正常な状況で稼動している。
総量規制地域内における高度処理設備の負荷状況は総量規制後に著しく増加しており, また, 他の地域に比べて著しく高い。
等の事が明らかとなった。そこで, これらの諸点について今後のし尿処理施設における水質保全への対応について検討した。