抄録
好気下における底泥からのリンの溶出機構を鉄の錯形成との関連から検討した。すなわち, 好気下において底泥から溶出したリンの溶存を防げていると考えられるFe (III) -水酸化物の生成が, Fe (III) -錯体の生成により阻害されるならば, 好気下でも上層水中のリン濃度に影響を与えるだけのリンの溶出がみられるのではないかと考え, 実験的検討を行った。
ここでは, 手賀沼の金属錯体容量 (CC) の測定を行い, 自然水の持つ錯体成能を把握し, 鉄の溶存形態を考察した。CCの測定法として本研究で用いた水酸化銅沈殿法は, EDTAやNTAなどの強錯形成剤は完全に定量されたが, 弱錯形成剤の回収率は低かった。手賀沼のCC値は0.54~3.15μM, 流入河川は0.58~14.16μMであった。また, 沼内のCC, s-Fe, PO4-P濃度の間には, おおむね類似の季節変化がみられた。s-Fe濃度およびCC値からみると, 手賀沼で測定されたs-Feは錯体を形成して溶存しているのではないかと考えられた。