抄録
フェノールの嫌気性分解では, 気相に水素とCO2が存在する場合に安息香酸は最も顕著に生成した。クロロホルムなどの微生物阻害剤を添加して, 安息香酸とフェノールの嫌気性分解中間体を検出した。安息香酸の分解では, シクロヘキサンカルボン酸, プロピオン酸, 酢酸, 水素が検出された。フェノールの分解では, 安息香酸, プロピオン酸などが認められたが, シクロヘキサノールなどは検出されなかった。
フェノールの分解は, 窒素ガス雰囲気下においても安息香酸を経由すると考えられた。フェノールにCO2が付加した安息香酸を生成する反応は, 低水素分圧下においても有利に進行することが, 熱力学的考察から明らかになった。安息香酸の嫌気性分解が安定であったのに対して, フェノールの分解は, 汚泥接種量を減少することなどによって著しく低下した。 Sludge fluidの添加は, フェノールの分解速度を向上させるのに効果があった。