水質汚濁研究
Print ISSN : 0387-2025
キャピラリー・GC/MSによる農薬の一斉分析について
奥村 為男今村 清
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1991 年 14 巻 2 号 p. 109-122,97

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抄録
本論文はキャピラリー・GC/MSにより環境試料中の農薬をスクリーニングするため,140種の農薬について分析上の基本的操作での挙動を検討したものである。検討した項目は,マススペクトルの測定,3種のキャピラリーカラムでの保持指標(PTRI),内標準法による相対感度およびその変動,オクタノール/水分配係数,ヘキサンおよびジクロロメタンによる抽出率,Sep-Pak C18カートリッジカラムによる捕集率,水蒸気蒸留による留出率,アセトニトリル/ヘキサン分配による損失率,フロリジルカラム分画,サンプリングおよび保存容器,試料水の保存期間についてである。PTRIについては,ULTRA-1とULTRA-2の間に完全な直線関係(r=0.999)が得られ,一方から他方が予測できる事が解った。これらのPTRIデータはGC-MSによる同定を容易にするものである。標準液注入による内標準法によるCV(%)は,内標準を3~5個程度使用すれぼほぼ10%程度以内に納まった。ジクロロメタン抽出では,キャピラリーで分析可能な農薬についてはほぼ満足な抽出率が得られた。ヘキサン抽出ではLog Powが2.5以上のものではほぼ定量的に抽出できることが解った。Sep-Pak C18による液固抽出ではLog Powが2.5以上であればほぼ定量的に捕集できた。2.5以下についてはLog Powの低下に伴って捕集率も低下するものと定量的に捕集されるものとの2つのグループが存在するという興味ある知見が得られた。フロリジルカラムによる分画では極性順に4分画した。一部の農薬にエーテル使用で分解するものが認められた。サンプリング容器については,ポリ瓶ではLog Powが3以上のものでは吸着が認められた。試料水の保存に関しては、冷暗所に保管すれば大部分の農薬については安定であったが,一部のものに分解が無視できないものもあった。
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© 社団法人日本水環境学会
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