抄録
廃棄物問題への対策としてしばしば議論に上る経済的手法の一つにデポジット制度がある。このデポジット制度に対してこれまで様々な研究において,その有用性が指摘されている。しかしながら,その導入に対して否定的な見解を示す研究も見られ,実際にデポジット制度が廃棄物問題への対策として適用されることは少ない。本稿は,この乖離の原因を探るべく,デポジット制度に関する既存の経済学的研究から,デポジット制度の得失を整理したものである。そして,デポジット制度の得失を考慮した費用便益分析の再検討をおこなう必要があること,デポジット制度導入の課題を克服し,利点を生かす方策に関する研究を深めていく必要があることを提示する。