本研究では,活性汚泥中のメタン生成古細菌の存在に着目し,中温条件において完全混合型反応槽を用いた室内実験により,種汚泥なしで余剰活性汚泥から直接メタン発酵槽をスタートアップする方法について検討を行った.VFAの蓄積及びpHの低下による酸敗現象を防ぎ,メタン生成古細菌を十分に馴致するために,実験条件は(1)初期投入TS濃度1.5%,(2)約1カ月間の回分培養,(3)連続培養では有機物負荷を段階的に増加させる,とした.結果としては,約22日でバイオガス生成のピークが見られ,その後の連続培養ではHRTを100,50,30日と段階的に変化させるに従いガス生成量が増加し,約100日間の運転で定常状態となることが分かった.全160日間の連続運転で安定した運転が実現できており,pHの調整を行わずに種汚泥なしで,余剰活性汚泥から中温条件で良好なメタン発酵のスタートアップ及び安定した運転が可能であることが証明された.