抄録
有害廃棄物の越境移動については、多くの国がバーゼル条約に沿った規制を定めているが、バーゼル条約発効後も、有害廃棄物の越境移動により健康被害が生じる事件や、バーゼル条約あるいは各国の国内法に基づき有害廃棄物の越境移動とみなされ摘発されるケースが少なくない。本稿では、有害廃棄物の越境移動として表面化した事件等について、アジアを中心に13のケーススタディを行い、有害廃棄物の越境移動に関する規制のあり方に関して検討を行った。有害廃棄物の定義の違いにより輸出国と輸入国の見解がわかれるケースが少なくないこと、輸出時には輸出国政府が有害廃棄物として認識せずに輸出されたケースばかりであることが明らかとなった。輸出国・輸入国での有害廃棄物の定義について共通認識をつくり、輸出国・輸入国が協調して規制の執行を強めることが必要である。