抄録
カルシウム制限下において,藍藻類Mcrocystis aeruginosaと珪藻類Cyclotella sp.の単藻および2者培養を行うことで,カルシウムの濃度がこれら2種類の藻類の増殖に及ぼす影響を検討した。単藻培養から得られた増殖速度をMonodモデルにあてはめ,2種の藻類の最大増殖速度(μmax)と半飽和定数(KCa)を算出したところ,M. aeruginosaはμmax=0.51 d-1, KCa=1.00 mg-Ca/l,一方Cyclotella sp.はμmax=0.56 d-1, KCa=1.46 mg-Ca/lとなった。また,2者培養からカルシウム濃度が2種の優占化に及ぼす影響を考察した。一般的にM. aeruginosaを制限する物質として知られているリンとこれらの実験結果を比較し,どちらが藻類の増殖に強く影響を与えているかを検討した。さらに,M. aeruginosaの増殖を制限するカルシウムおよびリン濃度の閾値を検討したところ,M. aeruginosaはリン濃度をP = 0.01 mg/lまで下げても増殖できたのに対し,カルシウムに対してはCa = 0.1 mg/lの時には全く増殖できなかった。