抄録
琵琶湖では,陸域からの流入負荷と植物プランクトンの総細胞容積が減少しているにも関わらず環境基準項目であるCODが減少しない現状がある。加えて,琵琶湖では藍藻の増加が観測されている。多くの藍藻は大量の粘質鞘(細胞外多糖類,EPS)を有しており,琵琶湖のCODに有意な影響を与えている可能性がある。そこで本研究では,1980年から2009年までの30年間にわたって,北湖西岸部の今津沖,北湖東岸部の長浜沖,北湖中央部の今津沖中央の3地点における植物プランクトンの総細胞容積および粘質鞘(EPS)容積の長期変動について解析した。滋賀県が継続して実施してきた植物プランクトンのモニタリング結果をもとに,総細胞容積および粘質鞘容積の地点別経年変化を10年間隔で平均値を比較した。長浜沖における2000-2009年の総細胞容積は1980-1989年と比較すると,85%に減少したのに対し,粘質鞘容積は309%に増加していた。さらに,1980-1989年における細胞容積に対する粘質鞘容積は31倍であるのに対し,2000-2009年には112倍と増加した。同様に今津沖や今津沖中央についても,細胞容積に対する粘質鞘容積は,今津沖で41倍から109倍に,今津沖中央でも40倍から120倍にと粘質鞘を有する植物プランクトン由来の粘質鞘が各地点で増加していることが明らかとなった。この粘質鞘に由来する湖水中多糖類の存在が難分解性有機物の生成に関わっている可能性があることから,これら植物プランクトンが細胞外に産生する大量の粘質鞘は,内部生産有機物の性状変化と密接に関わっている可能性が示唆された。